地下蔵がもぬけの殻となった数刻前
まだ朝日も昇らぬ時分

これから父親の身に起こるであろうことをまだ知らない官吏を含めた側近達数名は、他の妓楼からの帰り道であった


「ファリョンの娘の行方はまだ掴めないのか?」

「……はい、間違いなくファリョンの実弟、トンウンと一緒に居るのは分かっているのですが
どうも行方を晦ましたようで」

「トンウンか……ちと厄介だな、あの者は腕が立つ」

「腕の立つ者を集めますか?」

「あゝ、人手は多くて構わん
早急に捕まえろ
娘はファリョンに似ているからな
一頻り遊んでから売り払う」

「御意」

官吏は舌なめずりをしながら口元を腕で拭った

「ずっと目を付けていたのだ
彼奴等が居ない今、あの娘を好きに出来るのは俺だけだ」

官吏の言葉に、側近達も思わずごくりと唾を飲み込んだ
 

この男の加虐的な趣味嗜好はある程度は理解していた
有り余る程の性欲で以って、女人を狂人、廃人へと変える程の
残虐行為を繰り返してきた官吏のファリョン...リョンへの執着は知っていたが、
まさか、娘にまで目を付けていたとは

「流石にそこまで執着なされていたとは思いませんでした」

「ふふふっ…俺はな、欲しいものは絶対に手に入れる男なんだ
そして、手に入れたら自分の手で壊したい
何故なら、この先逃げられたり、誰かの手に渡ったりなどしたら不愉快だろう?」

そう言ってくつくつと笑う官吏に側近達も感嘆の呻きを挙げざるを得ない

清々しい程の自己中心的な考え
そこには一片の理性も無い
自分の思うままに生きる
正に、完全なる外道の所業だ
だが、側近達にはそれが酷く魅力的に見えた

側近は薄っすらと笑みを浮かべる

「早急に捕えます」

「頼むぞ」

「御意」

からからと笑いながら歩いていると人通りの少ない道へと差し掛かった
薄暗い道に月がぼんやりと光っていた
それが突然、消えた
否、消えた様に視えただけだ

「な、何も……の」

月の前に黒い影が立っていたのだ
はっ、と気付いた時にはもう遅かった

ばたっ

一人

ばたっ、ばたっ、………

二人、三人、………

一気に側近達が倒れた
何が起こったのか
官吏の周りには側近達の屍があった
その異様な光景にぶるぶると慄える官吏は目の前に立つ影に向かって何とか口を開いた

「お、お前………は一体」

月に背を向けた影の顔は真っ黒で何も見えない
だが、表情も分からぬその影から発せられる殺気に官吏は思わず膝をつく

影は抑揚の無い冷たい声音で言った

「お前如きに名乗る名は無い」

その言葉を聞いた瞬間、官吏は意識を失った

 

 

 

 

 

申し訳ありません。

自動更新するのを忘れておりました。泣

 

 

 

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