「舟がだと?」

早朝、駆け込んできた部下に苛つきながらも、
その不可解な報告に官吏の父である村の助役は思わず聞き返した

「はい 舟は炎上、其処に居た筈の者達も居らず…」
「居ない?どういう事だ?」
「分かりません
その…………消えたのです……忽然と」
「消えた?」

昨日、密かにやって来た倭寇の者達は、談議を終えると軽く此処で遊んでから夜半、自分達の舟へと戻って行った筈だ
なのに、たかが数刻の内に、忽然と姿を消したと
それも舟の炎上と共に

一体、何があったのだ?

そう問うても分からないと答えるだろう
それはあまりにも不自然で不可思議だったからだ

助役が押し黙ったままでいると部下は

「それと……旦那様」と、おずおずと伺う様に言うとそっとあるものを差し出した

「船着き場に此れが」

それを見た瞬間、助役は驚いて目を見開いた

「此れは………」
「ご存知なのですか?」

知らない筈はない
元々、文官の出で元との交渉役も担っていた助役だ
彼等の存在は

「………"チョ…ゴルテ"」
「何です?」

助役は再び押し黙ると部下を手で「もう良い」と退けた
部下は頭を下げると出ていった

一人になると助役は拳をぐっと強く握り締めた

チョゴルテ…赤月隊
王、直属の隠密部隊だ
何故奴等が
まさか、、、こんな僻地まで嗅ぎ付けたのか?

「そんな馬鹿な…」

奴等に存在を知られたら最後

「生命は………無い」

思わず漏れた声は掠れ、唇はかたかたと震えていた

すると、外からばたばたと騒々しい足音が近付いてきた
 

ばたんと音を立てて戸が開くと助役の従者が足を縺れさせながら転がり込んできた

「旦那様!」
「………今度はどうした?!」

助役は立ち上がると思わず苛立ち紛れに叫んだ
すると、従者は震えながら甲高い声を上げた

「地下蔵が……地下蔵がっ!」
「何だ!」
「か、、、空っぽです」

もう、、、お終いだ


助役は真っ青になりながら崩れ落ちた
 

 

 

 

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