五尺八寸(約175cm)程の体躯が
小さく縮こまっている

自分の手を握り、布を巻き付けるだけなのに
ああでもない、こうでもない、と
眉を寄せてる姿は先程までの知的な様子からは
想像もつかない

痩身に似合わぬ端正な顔を、
メヒはまじまじと見つめた

すっきりと通った鼻筋に細い顎
きめ細やかな肌
長い睫毛が切れ長の瞳をいっそう際立たせている

メヒはふと
有る事に気付いた

この雰囲気…

「ジイルさんに聞きたい事があるの」
「何だい?」

「ジイルさんって………女のひとなの?」

メヒの問い掛けに、
ジイルは一瞬、驚いた様に目を見開くと
直ぐににっこりと笑顔になった

「よく気付いたね」
「うん
だって、男のひとの雰囲気じゃないんだもん」

初めて見た時、
周りの人達に上手く溶け込んでいたのか
そんな雰囲気は一切無かった
だけど、
こうして対面し、間近で見ると
男のひととは全く違う事に気付いたのだ

「ふふ、やはり君は違うね
トンウンに鍛えられた事だけある」
「え、あの…鍛えられたっていっても
大した事は教わってないし、
ジイルさんがオンニだって気付いたのも
偶然っていうか…」
「それでもこの姿で気付かれるって
滅多にないことなんだよ」

実際、ジイルの姿形だけ見たら
男と言われる体躯そのものだ
痩身ながら、衣で隠れてはいるが
鍛え上げられた筋肉は隠せない
元々色素が薄いからか、
肌も白く目の色も髪も茶色が掛かっている
だからか、体毛が薄く
その為、髭も生えないのだろうと
そんな風に勝手に解釈されているのだ

「小さい頃にね
色々弄くられちゃったから、
この身体は女人の躰を保てなくなってしまったんだ
だから、私が女人だって知ってるのも今居る面子だけなのさ」

だからね、と唇に指をあてると、
「皆には内緒だよ」

そう言ってジイルは小さく笑った

 

 

 

ずっとメヒの沈んだままだった心がジイルのお陰で少しだけ浮上する

時折、傷んだままの手を擦りながらジイルと他愛もない話をしていると
あっという間に家のそばまで来ていた


「メヒ!」


自分を呼ぶ鋭い声色に、
メヒは肩をびくつかせて声のする方を見た


簡素な造りの門扉の前にトンウンが立っていた

その顔が酷く怒っているのが分かる
メヒは思わずジイルの背に隠れた


足早に近付いてきたトンウンに、
メヒは俯いたまま更にジイルの背にしがみついた

トンウンに黙って出てきたこと
心配かけてしまったことは分かっている

トンウンに対し申し訳ない気持ちで
メヒはトンウンの顔が見れなかった


「メヒ!」
「………………」


何も言えずに黙っていると
トンウンがぽつりと呟いた


「遅かった…じゃないか」
「え...?」
「………姉さん達が待ってるぞ」


メヒは、はっと顔を上げトンウンを見た


眉を下げ心配げな、苦しそうな顔を
必死に怒った表情で取り繕った
そんな何とも言えない顔でトンウンはメヒを見ていた

メヒの激しい痛みが突き刺さる
込み上げる想いが涙となって頬を伝った


「ごめん……ごめんなさい、叔父さん」

...... 叔父さんにこんな顔させちゃ駄目だ
私は、、、生きなきゃ


メヒは勢いよくトンウンにしがみつくと
その胸に顔を埋め泣いた

 

 

 

 

 

 

↓励みになります。

ポチっと一押し宜しくお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ