成人するあなたへ

鴻上尚史


愛媛新聞2012.1.9.

(つまみ書き)


大人とはなんでしょう。

20歳をすぎると、実にやっかいな問題にぶつかります。

解決不可能な、どちらの結論を選んでも

間違っているんじゃないかと思えるような

正しい解決策が見えない問題です。


そういう時、こどもは自分で考えることをやめて

親や誰かのアドバイスや言いつけに従い舞うs。

そうすれば楽ですし、責任も生まれません。

そして、20歳を過ぎてもそうしている人は

絶対に孤独になりません。


孤独とは「一人で自分と向き合う」ことです。

たとえば、あなたがすてきなアドバイスを受けたり

役に立つ本を読んだりしても

一人でかみしめる時間がなければ

それはあなたのものにはなりません。


今聞いた役に立つ情報を

右から左に伝えるだけでは、あなたのものになってないのです。


「本物の孤独」をもった人だけが

うんうんとうなりながら問題に取り組むことができるのです。


もし「本物の孤独」を経験したいと思ったら

あなたは携帯電話を切り、パソコンやテレビから離れて

あなただけの時間を持つ必要があります。

その時間が長ければ長いほど

あなたは「本物の孤独」と出会い

自分自身と会話をはじめられるのです。


「本物の孤独」はしんどいですが

あなたに暗闇を進んでいく勇気をくれます。

終わりが明確でない暗闇を

一歩一歩歩くとき、

あなたは初めて大人になれるのです。