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対局前に研究した通り犬塚六段は相掛かりの戦法(居飛車の戦法の1つ)を選択してきた。
それに対してこちらは古典的な棒銀の戦法で対抗した。
頭の中の悪魔の助言通りに序盤から急戦となった。
棋譜を検討した結果、この犬塚六段は持久戦を得意としていたのだ。
ならば相手が苦手としている急戦で行くのが常套である。
中盤を飛び越して序盤からいきなりの終盤へと展開が向かった頃、控室はまたも騒然としていた。
観戦記者が一緒に観戦していた里見会長に問い掛ける。
「会長、犬塚六段の急戦は珍しいですね。」
「う~む・・・どうも晴耕志さんの作戦に乗せられた感じで進んでますなぁ・・・・。」
「と、言う事は晴耕志さんが優勢と言う感じなんでしょうか?」
「・・・・いや、優勢より既に勝勢ですな・・・。驚く事にこんな短期間で六段を圧倒するほど成長するとは思いも寄らない事でした。」
周りで観戦していた棋士達も一応にざわついている。
【お~、何だコイツ。弱すぎじゃねぇ?】
【ちょっと!それは無いんじゃない?よく勉強して強くなったとか・・・私を褒めてよぉ。】
【ぷぷぷ・・・・。それはやめとこう。馬鹿は煽てたら木に登っちゃうじゃねぇか。】
【うぅ・・・・。馬鹿、馬鹿って・・・・馬鹿じゃないもん!】
【ぷっ!・・・まあ良いさ。それより今日は反則負けだけは勘弁しろよ。二歩とか時間切れとか・・・「待った」とかな。】
【うぐぅ~・・・。まだ言うか、このおすぎめぇ~!】
【あ、また、おすぎって・・・。おい、それより、そろそろ飽きてきたんでさっさと終わらせろよ。】
【さっさとって・・・・まだ終わりじゃ無いじゃない。】
【はぁ?・・・・こりゃ、勉強がまだまだ足らんな。お前、この手順で詰みがまだ読めないのか?】
【えっ?・・・詰み?・・・・あるの?ここで?】
【ふぅ~。もう一回言おう。馬鹿じゃね?あと13手で詰むよ。よく考えろ。】
【・・・・13手詰み・・・・】
泰葉が詰み手順を読み込んでいる間、犬塚六段の手が止まったまま時間が進んでいた。
その間に泰葉がその詰め筋を発見してしまう。
【あっ!!!そうか!解ったぁ~!】
【・・・・喜んでいる場合か。プロならたった13手の詰みくらいすぐに気がつけよ。帰ったら反省会だな。】
【・・・・解ったわよ・・・。勉強するわよ・・・・。確かに詰将棋をもっと勉強しなくちゃ・・・・。】
【おや?えらく殊勝じゃねぇか。どういう風の吹き回しかねぇ~。】
【・・・・う~、この口の悪さが無かったらとっても凄い先生なのにぃ。】
【はぁ?口の悪さ?お前ほどじゃねぇよ。女とは思えない口の悪さにこっちが呆れてるわ。わっはっはっは・・・。】
犬塚六段が時間を使った末に指した途端に、泰葉が時間を使わず次の手を指したのを見て犬塚六段は観念した。
こちらも時間を置かずに投了する。
こういう所はさすがにプロ棋士である。
屈辱的な負けでも、それを引っ張って醜態を晒す様な真似はしなかった。
「・・・負けました・・・・。」
「・・・はい。」
それからしばらくは盤上で感想戦(対局者同士でその対局を研究する)を行う。
控室では大騒ぎになっていた。
「オイオイ・・・・勝っちゃったぞ。ペーペーの新四段が六段相手に圧勝だぜ・・・。」
「・・・・これはちょっとビックリだな。おい、次の対戦相手は誰だ?」
「う~んと・・・・次は新人戦だな。これは一躍ダークホースかもな。」
「いや、ダークホースじゃないかもだぞ。優勝候補の一角になるかも知れん。」
「いやぁ・・・升鍵名人がデビューした時以来の衝撃だな。」
ご満悦だったのは里見会長だった。
「いやぁ・・・嬉しいねぇ。期待の女性棋士がこれだけ話題になってくれたら、将棋界にとって僥倖だねぇ~。」
続く
対局前に研究した通り犬塚六段は相掛かりの戦法(居飛車の戦法の1つ)を選択してきた。
それに対してこちらは古典的な棒銀の戦法で対抗した。
頭の中の悪魔の助言通りに序盤から急戦となった。
棋譜を検討した結果、この犬塚六段は持久戦を得意としていたのだ。
ならば相手が苦手としている急戦で行くのが常套である。
中盤を飛び越して序盤からいきなりの終盤へと展開が向かった頃、控室はまたも騒然としていた。
観戦記者が一緒に観戦していた里見会長に問い掛ける。
「会長、犬塚六段の急戦は珍しいですね。」
「う~む・・・どうも晴耕志さんの作戦に乗せられた感じで進んでますなぁ・・・・。」
「と、言う事は晴耕志さんが優勢と言う感じなんでしょうか?」
「・・・・いや、優勢より既に勝勢ですな・・・。驚く事にこんな短期間で六段を圧倒するほど成長するとは思いも寄らない事でした。」
周りで観戦していた棋士達も一応にざわついている。
【お~、何だコイツ。弱すぎじゃねぇ?】
【ちょっと!それは無いんじゃない?よく勉強して強くなったとか・・・私を褒めてよぉ。】
【ぷぷぷ・・・・。それはやめとこう。馬鹿は煽てたら木に登っちゃうじゃねぇか。】
【うぅ・・・・。馬鹿、馬鹿って・・・・馬鹿じゃないもん!】
【ぷっ!・・・まあ良いさ。それより今日は反則負けだけは勘弁しろよ。二歩とか時間切れとか・・・「待った」とかな。】
【うぐぅ~・・・。まだ言うか、このおすぎめぇ~!】
【あ、また、おすぎって・・・。おい、それより、そろそろ飽きてきたんでさっさと終わらせろよ。】
【さっさとって・・・・まだ終わりじゃ無いじゃない。】
【はぁ?・・・・こりゃ、勉強がまだまだ足らんな。お前、この手順で詰みがまだ読めないのか?】
【えっ?・・・詰み?・・・・あるの?ここで?】
【ふぅ~。もう一回言おう。馬鹿じゃね?あと13手で詰むよ。よく考えろ。】
【・・・・13手詰み・・・・】
泰葉が詰み手順を読み込んでいる間、犬塚六段の手が止まったまま時間が進んでいた。
その間に泰葉がその詰め筋を発見してしまう。
【あっ!!!そうか!解ったぁ~!】
【・・・・喜んでいる場合か。プロならたった13手の詰みくらいすぐに気がつけよ。帰ったら反省会だな。】
【・・・・解ったわよ・・・。勉強するわよ・・・・。確かに詰将棋をもっと勉強しなくちゃ・・・・。】
【おや?えらく殊勝じゃねぇか。どういう風の吹き回しかねぇ~。】
【・・・・う~、この口の悪さが無かったらとっても凄い先生なのにぃ。】
【はぁ?口の悪さ?お前ほどじゃねぇよ。女とは思えない口の悪さにこっちが呆れてるわ。わっはっはっは・・・。】
犬塚六段が時間を使った末に指した途端に、泰葉が時間を使わず次の手を指したのを見て犬塚六段は観念した。
こちらも時間を置かずに投了する。
こういう所はさすがにプロ棋士である。
屈辱的な負けでも、それを引っ張って醜態を晒す様な真似はしなかった。
「・・・負けました・・・・。」
「・・・はい。」
それからしばらくは盤上で感想戦(対局者同士でその対局を研究する)を行う。
控室では大騒ぎになっていた。
「オイオイ・・・・勝っちゃったぞ。ペーペーの新四段が六段相手に圧勝だぜ・・・。」
「・・・・これはちょっとビックリだな。おい、次の対戦相手は誰だ?」
「う~んと・・・・次は新人戦だな。これは一躍ダークホースかもな。」
「いや、ダークホースじゃないかもだぞ。優勝候補の一角になるかも知れん。」
「いやぁ・・・升鍵名人がデビューした時以来の衝撃だな。」
ご満悦だったのは里見会長だった。
「いやぁ・・・嬉しいねぇ。期待の女性棋士がこれだけ話題になってくれたら、将棋界にとって僥倖だねぇ~。」
続く