みなさん、こんにちは音譜

 

忖度という言葉が私たちの生活の中ですっかり日常の中で定着しましたが、

現在私たちが使っている忖度という言葉は本来の意味とは違います。

以前にもブログに書いたのですが、本来は「他人の心中をおしはかること」です。

つまり現在と違って、むしろ良いイメージの言葉でした。

ところが2017年の森友・加計学園問題を契機にやたら頻繁に使われるようになり、

立場が上の人の意向を推測し、それに沿うように行動することという意味になり、

現在はむしろ、こびへつらうようなネガティブなイメージの言葉となってしまいました。

 

その後2019年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、母娘が死亡し、

9人が重軽傷を負った池袋暴走事故で生まれたのが上級国民という言葉。

飯塚幸三被告を通常の容疑者として扱わず、マスコミがこぞって

飯塚幸三元院長などというわけのわからない呼称で報道し、

あれだけの大事故なのに逮捕すらされなかったことから生まれた言葉です。

 

飯塚幸三氏が旧通商産業省工業技術院院長であったこと、

各種団体や企業の重役を歴任したエリートであったことから、

どんな事故を起こしても、こうしたエリートは我々一般市民と違って

逮捕もされなかれば容疑者と呼ばれることすらないのだ、という

国民の怒りが向けられた結果、揶揄する意味で上級国民と言われたのです。

 

もちろん飯塚被告が事故で大けがをして、事故後に入院したため、

逮捕して取り調べることが難しいというのはあったでしょう。

それでもいちいち「飯塚元院長」などとマスコミが報道したことで、

飯塚氏への怒りが増したことも事実です。

普段マスコミは「〇〇容疑者」と報道し、「〇〇元社長」などとは言わないのに、

飯塚被告にだけ「飯塚元院長」などと忖度をしたために怒りは増しました。

 

加えて飯塚被告の頑なな態度にも問題はあります。

どうみても安全に運転できる身体状態とは言い難い状況が映像として流れているのに、

自分には一切落ち度がなく、エンジンが高速回転し、意図しない加速が起きて

制御不能になったのだと、まるで車が悪いかのような主張を続けたことも、

報道を見聞きしている私たちは不快感を抱いてしまったのだと思います。

 

起きてしまった悲しい事故は、なかった状態に戻せるわけもないので、

法的に粛々と対処していくしかないと思うのですが、

心からの謝罪よりもまず自己保身に走ってしまったように見える飯塚被告の態度と

忖度しすぎたマスコミのせいで、事件はより深く人々の記憶に残ることになりました。

 

先月、飯塚被告には禁固7年が求刑されました。

要するに労務作業を伴わない刑です。

運転できると言い張るなら労務もできるのではないかと言いたくなりますが…。

そして禁固5年の判決が出ましたね。

法的にはそうなのかもしれませんが、あんな頑なで傲慢としかうつらない老人が

結構忖度され、優遇され、刑務所に入ってもきっと大した罰にはならないのに、

若い女性と幼い子供の命は犠牲になっており、なんとなく判然としませんね。

 

どんな大事故でもよほどマスコミで日々掘り返されないと他のニュースに埋もれて

被害者には申し訳ないのですが、人々の記憶から薄れていくのは否めません。

それでもこの事故はこうした変な報道の仕方などから強く印象づけられ、

上級国民という言葉とともに人々の陰性感情を伴う記憶が強化されたと思います。

 

マスコミをはじめとする変な忖度の結果、逆に悪い結果しかもたらさなかった例です。

 

報道の仕方の違和感と言えば、ジャニーズ事務所への変な忖度もありますね。

誰かが逮捕されても「〇〇メンバー」だとか「元メンバー」だとか、

普通に〇〇容疑者でいいのに、報道がこぞって一つの事務所に

そんなに変な忖度をする必要があるのでしょうか?

 

済生会中津病院で非常勤をしていたころ、私はマイクで呼び出すのが嫌いで

必ず診察室を出て「〇〇さ~ん」と自分で呼び出していました。

待ちくたびれて寝ている場合は、近くまで行ってそっと揺り起こしたり。

本来の接遇とは患者に「様」をつけることではなく、思いやりや気遣いです。

 

でもごく稀に「名前を呼ばれるのは嫌なので番号で呼んでくださいビックリマーク」と

要求する方がいました。そんなに珍しい苗字でもないので理由は不明ですが、

こちらはそれこそ忖度して「115番の方~」などと呼び出すことになります。

本人は気づいていないのかもしれませんが、待合の人は一斉にそちらを見ます。

周囲からガン見され、逆に目立ってしまう結果になっていたのは言うまでもありません。

「逆に目立ちますよ?」と言いたくなるのをこらえて診察していましたあせる

 

では今日は大好きなユーミンの「ハルジョオンヒメジョオン」を贈ります音譜

 

みなさん、こんばんは音譜

 

なんだか嫌な湿気がまとわりつくような今日この頃ですねあせる

今年は梅雨入りも異常に早くて、この週末などは梅雨後半という感じですが、

梅雨が明けたら猛暑晴れになりそうで気が重いですね。

アメリカやカナダでは猛暑のために死亡者も出ているようです。

 

ところでもうすぐオリンピック走る人なのですよね。

本当に安全・安心の大会運営などできるのでしょうかはてなマーク

私は菅総理をはじめ、オリンピッック関係者が、何かあれば判で押したかのように、

安全・安心」を強調するものだから、もうこの「安全・安心」という言葉に

どこか拒否反応が生じるようにすらなってきました。

 

しかし、そもそもオリンピックは安全安心に開催できて当然なのではないでしょうか?

ことさら声高に「安全・安心」をスローガンとして掲げる方がおかしいと思うのです。

 

思えば2020年、オリンピックを「完全な形での開催を」と大主張し、

2年の延期論もあったのに、自分の総裁任期に間に合わせたかったのか、

1年だけの延期にこだわった元総理は、総裁任期最長記録を打ち立てるのを待って、

浮上している色々な疑惑に一切答えることもなく降板しました。

2年延期にも、中止にもできたはずですが、何を根拠に1年でできると思ったのでしょうか。

 

世間の「本当にオリンピックをちゃんと開催できるのはてなマーク」という不安は今も拭えません。

 

政府も大会組織委員会も明確なビジョンや方向性が示すことはなく、

IOCの五輪貴族だとかぼったくり男爵などと揶揄される人たちの顔色しか見ていないのか、

世間の感覚とはかけ離れたことばかりしている印象です。

 

挙句の果てにウガンダの選手団に陽性者が出ているのに一行を大阪に。

誰が見ても「えはてなマーク他の選手は濃厚接触者じゃないの?」という疑問がわきます。

大阪まで来てから濃厚接触者と認定とかお粗末すぎることこの上ありません。

ちゃんと成田空港で濃厚接触者とすべきだったのです。

こういうザルもザルの水際対策で無駄に泉佐野の職員らも濃厚接触者と

なってしまい、バブル方式なるものはすでに名前通りはじけているようです。

 

だいたい論点がどんどん勝手にずらされていると思います。

 

そもそも「この状況でオリンピックを本当に開催するかどうか」という議論はなく、

いつの間にかしれっと「有観客か、無観客か」という論点にずらされていて、

それすらもちゃんとした議論がなされ、世間一般に対しての説明がされることもなく、

「観客上限を5千人にするのか1万人にするのか」という論点にすり替えられ、

挙句はどさくさに紛れて「スポンサーやIOC関係者1万人は別枠」と発表。

 

「安全・安心」のために不要不急の外出はするな、飲食店も20時まで、

お酒の提供も19時まで、映画館なども20時まで、さっさと帰れという制約を課す一方、

なぜかオリンピックだけは特別扱いがまかり通るようで

ついこの前までは終電を繰り上げろと言っていたはずなのに、開催期間中、

山手線は午前2時ごろまで運行するなど終電を繰り下げる方向に・・・。

もう自粛疲れした人たちが夏休みも相まって夜中まで大騒ぎする可能性が高いでしょう。

 

オリンピック選手へのワクチン優先接種を一部の人が非難したためでしょうか、

先日は山下会長が会見を開き、またまた余計なひとことを・・・。

「叩くんだったらJOCを、JOC会長の私を、あるいは組織委員会を叩いてほしい」

まぁごもっともです。どうみても役割をきちんと果たせていないのですから。

しかしそのあとのひとこととそれに続くモスクワオリンピックボイコットに関する

心の傷のくだりは本当によけいだったと思います。

「多くの選手にとってはオリンピック、一生に一度が多いです」

 

きっと多くの人が「私たちだって一生に一度の子供たちの運動会や修学旅行、

卒業式や入学式、果ては冠婚葬祭まで我慢してるのに、

なぜオリンピックだけ特別扱いするのはてなマークむかっ」と余計イライラしたでしょう。

 

大変な時期の開催だが、選手は頑張っているから、どうか応援してほしい、

ワクチンはオリンピック用に無償提供されたものだから、本来国民に打つために

用意しているものを横から使ってるわけじゃないのでどうか心配しないでご理解を、

これだけで事足りたのに、この人も自分の昔話など持ち出して論点がずれているのです。

 

そう言えば菅首相も党首討論の場で長々とご自分の五輪の思い出話をされましたね。

あれをテレビニュースか何かで聞いた時、正直ポカ~~ンはてなマークはてなマークでした。

「命をリスクにさらしてまでオリンピックを開催しなければならない理由は何か?」

「本当に安全・安心なオリンピックを開催できるのか?」という趣旨の質問に対して

45分しかない党首討論の場で延々とノスタルジーに浸られても呆気にとられます。

もう論点どころか会話自体が全く嚙み合っていないのです。

これで勇気や希望を与えたいとか、世界に発信したいとか言われても・・・。

むしろこういう映像を世界に発信されて恥ずかしいと思ってしまいますね。

 

ザルすぎて話にならない水際対策

脆くはじけることが必至のバブル方式

後手後手でとうていオリンピックに間に合わないワクチン接種

責任の所在がはっきりせず、縦割り行政で責任の押し付け合い

これほど安全・安心からほど遠いオリンピックもないでしょう。

そして世界に発信されるのはこんな状況でオリンピックを開催することの無謀さです。

もはやわざととしか思えない論点のすり替えで強行するようですが、

オリンピックが終わった後に残されるレガシーはいったい何でしょうか。

 

では今日は桜井和寿による中島みゆきの「糸」のカバーを贈ります音譜

みなさん、こんばんは音譜

 

少し前ですが、薬剤師さん向けに

「処方箋における処方意図と治療方針」というテーマでweb講演会をしました。

 

まきメンタルクリニックは院外処方なので、持効性注射のみの患者さんと

お薬なしの患者さん以外は全員処方箋を持って薬局に行っていただきます。

 

医薬分業なので本来薬については薬局で服薬指導を受けるのですが、

当然こちらも処方をする時には薬の効果や起こりうる副作用、

またなぜこの薬を処方するかなどの説明はしています。

 

薬物はすべて体内に入る異物なので、説明をきちんと聞いてほしいと思う反面、

過度に細かなことにこだわられると処方が困難になります。

 

よくあるのが「どんな副作用がありますかはてなマーク」という質問。

これはぜひ聞いておいてほしいと思います。

どんな薬剤にも副作用はあります。問題は副作用と効果のバランスです。

しかも副作用は個体差が大きいので、みんなに出ないから自分にも出ない

というものでもありません。

 

副作用はなくて効果があるというのが理想的ですが、

中には体質的に副作用が出やすい人もいるので、

発現する副作用と効果のバランスで、圧倒的に効果が優れている場合、

例えば多少眠気はあるが、内服することで不安感が大きく減少して生活しやすい

ということであれば、内服継続をお勧めします。

もちろん車の運転などは控えるようにお伝えしますが。

 

一方、特に副作用もないけど効果も感じられない場合、

例えば抗うつ剤などは効果を実感するのに最低1ヵ月程度はかかるので、

1~2週間後に患者さんが来られて「効果がわかりません」と言われても、

副作用がなければ内服を続けてもらい、効果が出るまで待ってもらいます。

1ヵ月未満の短期間で、効果がないと患者さんが訴えたからと言って、

「じゃあ別の抗うつ剤出しますね」などと薬をころころ変えると、

抗うつ剤に関しては、効果が出る前に薬を変えることになり、よくありません。

 

こうした説明や調整などでほとんどの患者さんは納得して

服薬を継続するのか、一旦お薬をやめて様子をみるのかということになります。

 

しかしごく一部の患者さんは薬局でもらう薬剤情報に書かれていることに

過敏に反応して、まだ自分に全然生じていない副作用に拘る場合もあります。

「〇〇って書いてありますけど飲み続けて大丈夫ですか?!」と言われると、

「絶対にあなたにはその副作用反応は起こらないので大丈夫です!」

という保証は誰にもできないのです。

 

薬剤情報ならまだいいのですが、「ネット(一般人のブログ)に書かれてあった」とか

果ては「ご近所の人から『精神科の薬なんか飲んだらよくない』と言われた」

などと言われるとこちらも薬なしですべての治療をしないといけないことになり、

それはかなり厳しいと思います。

もちろん精神療法も大切ですが、それだけで治療するのは困難です。

 

でもなぜかそういう患者さんに限って、ある日診察中に突然

「おばあちゃんに出されていた睡眠薬を飲んだらよく効いたから出してほしいビックリマーク

とか言い出したりして、こちらがびっくりします叫び

いやいや、それはおばあちゃんに処方されたもので、勝手に飲んだらダメでしょ汗

と突っ込みたくなります。しかもそれが私の嫌いなベンゾジアゼピン系の

薬剤だったりして、さらにΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン!です。

あんなにかなり些細な副作用に拘ってたはずなのに、いきなり何の説明も

受けていない、しかも他人に処方された睡眠薬を内服してしまうのが謎です。

 

あとはこちらが処方した薬を、どんなに丁寧に説明しても内服しない人も困ります。

なかなか良くならないのでおかしいなと思って聞いてみると、

ちゃんと内服していないということが稀にあります。

顆粒は苦手だとかカプセルが飲めないなどの飲みづらい剤型なのか、

ちょっとだけ内服したけど効果が出ないと自己判断してやめているのか、

ついついうっかり飲み忘れてしまうのか、理由はさまざまでしょうが、

はっきりした理由を教えてくれない場合も対処に困ります。

 

また余った薬は捨ててしまえばいいと思っている人は困ります。

薬代の7割~人によっては全額税金で賄われているという意識がまるでないのかな

と思います。まわりまわって自分の払った税金が捨てられているのと同じなのです。

逆にいつのかわからないくらい古い薬でも、あると自己判断で内服する人、

これはこれでとても怖いのでやめてほしいと思いますあせる

 

とにかくこうした患者さんの疑問や、困ったことに対応するために、

2020年9月から改正医薬品医療機器等法(薬機法)により

薬剤師による服薬フォローが義務化されました。

 

薬剤師が調剤時に限らず、必要に応じて薬剤の使用状況の把握や

服薬指導を行う、いわゆるフォローアップが義務化されました。

具体的には、薬剤の適正使用のために必要と認める場合には、

薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、

患者本人、または現にその看護にあたっている者に対して

必要な情報を提供し、薬学的知見に基づく指導を行わなければならない

ということが薬機法で規定されたのです。

 

これは服薬フォローが必要そうな患者さんをピックアップして、

細かなことを聞き取ったり、必要な指導をしたりとなかなか大変そうです。

もちろんそれに伴って30点の保険点数が加算されます。

1割負担だと30円、3割負担の人だと90円です。

しかし手間とかかる時間を考えたら全然割にはあっていないと思います。

 

またこれらのフォローを行うにあたって、その疾患特性を理解しないと

いけないわけで、大変な業務だと思います。

しかし処方箋を見てもその処方意図がまったくわからない場合は

ちゃんとしたフォローをしようにもかなり難しいしょう。

今後は医師と薬剤師の連携もますます大切になってきますね。

 

どうか患者さん自身も当事者意識を持って、服薬フォローにご協力ください。

 

Written by  まきメンタルクリニック       院長 西崎真紀

 

では今日は懐かしいKの「over...」を贈ります音譜

みなさん、こんばんは音譜

今日は少し晴れてましたが、うっとおしい雨が続きますね雨

 

さてさて、先日深田恭子さんのことを書いたのですが、

今度は大坂なおみ選手がうつ告白?(←敢えて?です)をしましたね。

ネットを見る限り寛容な論調で、それはとても良い風潮なのですが・・・。

 

2018年からうつで苦しんでいた、とのことですが、治療はしてるのでしょうかはてなマーク

そんなに長く苦しんでいるのに治療の話はまるで出てきません。

もちろん必要な薬を飲んでいるのかも不明です。

ですがそもそも彼女はひとことも「うつ病だと診断された」とか

「そのための治療を受けている」とは言っていません。

深田恭子さんの場合は「医師による診断」があり、休養を要すると

判断されたのでしょうが、そこが大きな相違点です。

 

彼女のTwitterにはこう書かれています。

 

The truth is that I have suffered long bouts of depression since the US Open 

in 2018 and I have had a really hard time coping with that

 

訳:私は2018年のUSオープン以来、長い間憂うつ気分に苦しみ、

  その対処に本当に苦労しました。

 

ここではDepressionを憂うつ気分とあえて訳しましたが、これを「うつ」もしくは

「うつ病」と解釈するのが本当に正しいのかは悩むところです。

しかし世間一般ではうつ病で苦しんでいたという受け止め方をしたようです。

 

そして少し冷静になったのかこのように続けています。

 

I'm gonna take some time away from the cort now,but when the time is right

I really want to work with the Tour to discuss ways we can make things better

for the players,press,and fans.

 

訳:しばらくコートを離れますが、しかるべき時が来たら、ツアーと協力して、

  選手、報道機関、そしてファンにとってより良い方法を話し合いたいと思っています。

 

私は最初にこの告白があるべきだったと思います。

 

プレスのくだらない質問に悩まされることがあるのはよく理解できます。

他のいろいろな会見を見ていても「なぜあんな質問を?」と

見ているこちらが不快になるようなくだらない質問をする記者は一定数います。

全力を出し切った試合で負けた後、「あそこでこうしてたら…」などと言われたら

じゃああなたがやってみなさいよと言いたくなったり、傷つくのも理解できます。

 

人前で話すのがもともと苦手だという彼女がセリーナウィリアムズに勝った時、

会場の多くのテニスファンがセリーナ・ウィリアムズが優勝することを期待していたため、

大ブーイングという異様な状況の中、彼女が泣いていたのは印象的です。

「みんなが彼女を応援したことを知っています。こんな終わり方でごめんなさい。

試合を見てくれてありがとう。プレーしてくれてありがとう」

涙ながらの彼女のこのとても素直で素敵なスピーチは人々に感動を与え、

会場の大ブーイングは瞬時に盛大な祝福へと変わりました。

この時の彼女はインタビュアーに「質問とは違うことを話したい」とちゃんと伝え、

自分の言葉で観客にも対戦相手のセリーナにも感謝を述べています。

 

優勝したのにサンバイザーを深く被り、大きな体を小さくしていた彼女。

それでも勇気を出して自分の言葉を伝えることで人々の反応は変化しました。

言葉の大切さをよく知っているはずの彼女がなぜ今回こうした騒動を起こしたのでしょう。

 

インタビューを受けたくないし、受けることは自分のメンタルに良くないと思ったなら、

事前に主催者側と話しあうべきだったのではないでしょうか?

一方的にインタビュー拒否をSNSで投稿し、実際に拒否した彼女。

 

これに対してジョコビッチやナダル、錦織圭などの現役トップ選手たちは

概ね大坂選手に理解を示しています。

「彼女を尊敬しているし、彼女の言うことはわかる」と理解を示した上で、

「メディアもこのスポーツには重要な一部、会見には応じるべき」としています。

彼らも会見で辛い思いや悔しい思いをたくさんしてきたと思います。

 

その後、4大大会の主催者が共同声明を出す異例の事態となりました。

主催者側の声明は次のようなものです。

大坂選手に考え直すよう促して対話を提案し、健康状態の確認と

支援の申し出をしたが全て拒否された。

大坂選手が今後も会見の義務違反を繰り返した場合、全仏オープンの失格処分や

多額の罰金、将来的なグランドスラムの出場停止処分もありうる。

 

この主催者側の声明の後も、彼女は公式Twitterに

「怒りは理解の欠如。変化は人を不快にさせる」と投稿。

さらにインスタグラムのストーリーに、『Juice Wrld』の作品のジャケット写真と楽曲を公開、

ジャケットには「Good bye&Good RIDDANCE」(さよなら、せいせいする)と記されていました。

まるで挑発するかのような行動です。

 

こうした経緯の後で大坂選手は上記のようなツイートをしたのです。

この憂うつ気分の告白で、批判を受けがちだった彼女の形成は一気に逆転。

主催者側もスポンサーも、そして多くの戸惑っていた一般人も一気に優しくなりました。

 

大ブーイングの中、涙ながらにスピーチした時と同じように空気は一変。

でもあの時とは明らかに違う違和感があります。

 

なぜ彼女は最初から主催者側と相談し、自分のメンタル不調やその経過を訴え、

インタビューがどれほど自分には苦痛かを伝え、回避させてもらいたいと

相談しなかったのでしょう?

その相談をしたにもかかわらず「義務だからインタビューを受けろ」と

にべもなく言われたのなら、そこで初めて問題提起すれば良かったのです。

 

イタリアのメディアも同様のことを伝えています。

最初からどうして言わなかったのか?と。

「Depressionで苦しんでいる」というメンタルの問題は重要なことです。

後出しじゃんけんのように、後から言われても違和感は残ります。

しかしどんなに違和感があっても、メンタルの問題を持ち出されると、

人々はそれ以上何も言えなくなってしまいます。言えない空気に強く支配されるためです。

もし言えば「弱っている人間に鞭打つ行為」と非難を浴びるでしょう。

 

しかし繰り返しますが、彼女は決して「うつ病で治療を受けている」とは明言していません。

精神科医のカウンセリングや治療を受けることがごく一般的なアメリカ、

特に彼女のように年収60億以上もある選手なら、精神科医ではなくても

メンタルトレーナーがいて当然ではないでしょうか?

 

実際錦織圭選手も試合後に

「誰にでも起こる症状だと思うし、僕もメンタルの先生がついていますけど

それですごい救われた部分もあるので。はやく治してほしい」

と述べています。

 

 

通常うつの人は大事なことを決定するのになかなか自分で判断できません。

また人に迷惑をかけてはいけないという気持ちが強いため、

自分が傷ついていることさえきちんと自覚できずに必死で頑張ります。

 

長い間憂うつ気分で苦しんでいたのは辛かっただろうと思いますし、

それを告白するのにも勇気は要ったでしょう。

しかしそんなに憂うつ気分の強い人が挑発するようなSNSを発信するなど

通常は考えにくいのです。

 

またうまくいかないと試合中にラケットを投げて壊したり・・・。

こうした行動はほかのテニス選手にもみられますが、

少なくともこうした行動を見て不快に思う人も多いでしょう。

私も学生時代に剣道をしていましたが、道具に八つ当たりはあり得ません。

 

そしてBLM (Black Lives Matter) に関して言うと、彼女はかなり率先して

アピールしていましたし、それを評価されてローレウス世界スポーツ賞2021を

受賞しています。とても名誉な賞のようです。

しかしBML運動もうつで苦しんでいる人には難しいかもしれません。

目の前の自分のことをやるだけでも大変なので、そこまで頭が回らないからです。

 

彼女の行動を見ていると憂うつ気分というより情緒の不安定さや怒りを感じます。

確かに人前で話すのも苦手そうだし、インタビューで気の利いたことを言うのも

苦手そうです。次々と質問を浴びせられると混乱したりもするのでしょう。

しかし憂うつ気分よりも衝動的な怒りのコントロールができていないと思います。

試合中でもポキッと折れたようになることがあります。

冷静さを保つことが苦手なのでしょう。

前のサーシャ・バインコーチは試合中にそんな彼女をうまくたしなめていましたが、

2019年2月に突如大坂選手からコーチを解任されたのは有名な話ですね。

 

それでも彼女の良さが出る時は2018年の優勝スピーチのように

彼女の飾らない素直な言葉は人を感動させる力があるのです。

気の利いたことやおしゃれな言葉を選ぶ必要などありません。

あの時の彼女が人々を感動させたのは、彼女の謙虚さと素直さだと思います。

 

今回、残念ながら彼女にはそうした謙虚さは感じられませんでした。

SNSで一方的にインタビュー拒否、試合後言葉通りにそれを強行。

それは精神科医からみるとうつの人の行動とは異なります。

なんというか・・・未熟さや衝動性を感じます。アンガーマネジメントが必要というか。

 

一流のアスリートとは言え、まだまだ23歳。

精神的に成長していないのでは?という声もありますが、

日本が世界に誇るスケートの羽生選手などは若い時から非常に礼儀正しく、

特にオリンピックの時など重圧を跳ね返す精神力です。

海外のプレスのインタビューには可能な限り英語で答え、

演技の後には必ずお辞儀して「ありがとございました」と言っています。

もちろん、誰もがあんな羽生選手のような芯の強さは持てないでしょう。

だからこそ彼が一流として愛され、注目されるのです。

 

彼女の周囲に今回のSNSの投稿についてアドバイスする人はいなかったのでしょうか?

若くして60億以上ものものすごい大金を稼ぐようになった彼女は

下手すると周囲の大人たちの金づるになりかねません。

周囲の誰もが彼女のご機嫌取りに走り、たしなめることをしなければ、

この先の彼女はすぐに壁に突き当たってしまうでしょう。

 

そして大会は「Depression」で辛いし棄権すると述べる一方で

50日後に迫っているオリンピックには意欲を燃やしていると言われると、

ますます違和感しかありません。

正直そう思っている人は結構いると思うのですが、彼女が

I have suffered long bouts of depression・・・

とSNSで発信したために誰も違和感を公然と口にできなくなりました。

 

もちろん、Depressionで苦しんでいる人をみんなが温かく見守ろうとするのは

とても素晴らしいことです。素晴らしいことなんですが・・・

きっと私と同様もやモヤモヤしてしまう人もそこそこいるのではないでしょうか。

 

 Written by まきメンタルクリニック                            院長 西崎真紀

 

では今日はドラマ「カルテット」の主題歌「おとなの掟」を贈ります音譜

初めて聴いたとき「椎名林檎っぽいなぁ」と思ったら椎名林檎の曲でしたラブラブ

みなさん、こんばんは音譜

急に暑くなったと思ったら、昨夜は少し肌寒かったですね。

 

さて、女優の深田恭子さんが「適応障害で休養」というニュースに

驚かれた方も多いことでしょう。

深田恭子さん、いつもちょっと舌足らずな甘えた声で同じような演技をされるので、

正直個人的には女優としては残念ながらあまり評価してないのですが、

20年以上の長きにわたってあのスタイルと可愛さを保ちつつ、

たくさんの人から愛されるというのは並大抵のことではないと思います。

 

私はニュースを見た途端、「朝からだるおも~ダウンあせる」という

あのCMが頭の中をぐるぐる回りました。

きっと実生活の中でもあんな感じでしんどかったでしょうに、

つい最近までにこにこと笑顔でお仕事され、必要とあらば

身体には不必要と思われるダイエットなども頑張られたのだと思います。

 

さて、有名人がひとたび「適応障害」という診断をされたとなると、

この「適応障害」という診断名が独り歩きしまくるという懸念があります。

 

以前皇太子妃だった雅子様がやはり「適応障害」と診断され、

長期に休養されたことを記憶されている方も多いでしょう。

 

では実際に適応障害とはどういう状況のことなのでしょうかはてなマーク

またうつ病とはどう違うのでしょうかはてなマーク

 

私たち精神科医が書類などを記載するときに使う診断分類である

ICD-10(世界保健機関の診断ガイドライン)では、適応障害の診断基準を、

“ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が

著しく障害されている状態” と定義しています。

 

また日常の診断に一般的によく用いるのはアメリカの操作的診断基準DSM-5です。

そこには以下のAからEまでが列挙され、これらすべてを満たすものとされています。

 

A  はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから

     3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現
B.  これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、

    それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。

      1  症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、           そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛。。

      2  社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害。

C.  ストレス関連性障害は他の精神疾患の基準を満たしていないこと。

     すでに精神疾患を患っている場合には、それが悪化した状態ではない。
D.   その症状は、正常の死別反応を示すものではない
E.  そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、

   症状が症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

 

※参考文献
『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

 

つまりうつだと内因性といってはっきりした誘因がないこともあるのですが、

適応障害は明確なストレス因子があるということです。

ですからそのストレス因子を取り除かなければ快方には向かいません。

わかりやすく言えば「環境調整が必要」ということです。

 

症状としてはうつ病と同様憂うつ気分、意欲の低下、不安、不眠といった精神症状から、

食欲不振、全身倦怠感、頭痛や頭重感、めまい、動悸などの身体症状も認めます。

 

しかし行動面だと必ずしもうつ病のように自責的となって自己否定的となったり、

悲哀反応ばかりではなく、本来はそうではなかったのにやたらキレやすくなったり、

感情的行動をとったり、食行動の異常(過食や拒食)、遅刻や無断欠勤など

社会生活上本人も周囲の人も不利益を被るような行動が目立ったりすることもあります。

そしてその行動に対して必ずしも罪責感を持たないこともあります。

これはすぐに自責感にさいなまれて落ち込むうつ病と大きく異なる点です。

 

またうつ病の場合は診断基準でも「ほとんど一日中」というキーワードがあるのですが、

ストレス因となっていることや場所から離れても、抑うつ気分が持続し、無気力です。

いわゆる喜びや興味の喪失を認めます。

一方、適応障害の場合、ストレス因から離れると比較的安定することも多いのです。

 

例えば会社員だと金曜の夜になるとホッとして、土日は気持ちよく過ごせる、

でも日曜の夜になると「あぁ、また明日から仕事かぁドクロ」とどんよりするような

それのもっと劇的なバージョンとでもいいますか・・・汗

 

典型的なうつ病の場合、私も休職を勧める際にしっかり伝えるのですが、

「会社を休んでも気持ちはしばらくは休まりません。むしろ会社を休んでいるという

罪悪感でしんどいかもしれませんが、お薬が効いてくるまではそうなのです」と。

だからしっかりと抗うつ剤や必要に応じた薬を飲んで、休まなくてはならないのです。

 

適応障害の場合、会社を休んだだけでかなり気分は改善するので、

薬物療法はむしろ最低限にしておいた方がいいと思います。

適応障害に必要なのは薬よりもむしろ環境調整なのです。

 

ここまで読まれて鋭い方は気づかれたかもしれませんが、

適応障害といわゆる現代型うつって同じなの?と思われた方もいらっしゃるでしょう。

正式には現代型うつという分類は存在しません。

自責的であるよりむしろ他罰的で、休職期間中はちゃっかり旅行する、

そんな単なるわがままとしか思えない人が「うつ病」という診断書を提出して

楽しそうに休んでいたりすると、会社に残った他の人は迷惑でしかありません。

こうして現代型うつという名称がマスコミに登場したと思われます。

 

こういうどうみてもその人の未熟な人格の問題で周囲と折り合いがつかず、

自分を顧みることなく、例えば上司がパワハラしてきたと大主張して

あの人のせいでうつになりました!みたいに来る方もいないではありません。

同僚や上司をやたら攻撃し、むしろとても元気そうなのに「しんどい!」とか

「うつだと思うんです!」と大主張する人は、会社にいたら大変だろうなと思います。

確かにこの人が休んでいない方が会社の空気は平和なんじゃないだろうか、と

思うような人は稀にいます。

 

「会社からメンタルクリニックで診断書をもらって来いと言われました」と言われても、

こういう人たちに「うつ病」という病名をつけるのはいくらなんでも憚られます。

そもそも会社の都合で医学的根拠や診断とは関係なく診断書を求められるのは、

なんだか医療をなんだと思っているんだと言いたくなりますが、

社会や会社に適応できていないという意味で「適応障害」と書くこともあります。

 

こういう人たちは休職中はとにかく元気で、むしろ絶好調です。

次回の予約を取ろうとしても「その日はちょっと旅行の予定なんですよね」とか

「あ、その日は友達と会う約束してますから無理ですね」などと平気で言います。

こちらは診断書を書いて夏休みをあげているわけではありません。

入院する必要がないので自宅療養しているわけで、あくまで治療のために

お休みしているのですが、そんなことは頭から吹き飛んでるようです。

もちろん全く楽しいことをするなとは言いませんが、エンジョイしすぎなのです。

 

挙句に「〇月末まで休みたいんです」とか自分の都合を医療に押し付けます。

「あのね、医学的判断で期間を決めるわけで、あなたの希望じゃないですよ」

とこちらがたまりかねて伝えてもまったく平気です。

「だって会社にはもう〇月末まで休むと伝えてるしぃ」などと言い出します。

 

本来「適応障害」という診断のつく人は、適応できなかったというよりも

むしろ過剰に適応しようと努力しすぎていた場合が多いのです。

必死で置かれた状況に適応しようとあがいた結果、

神経がすり減って不眠や抑うつ気分、不安焦燥などが生じ、

気分が不安定になり、もはや適応できなくなるのです。

 

単なる未熟な人格で、周囲や社会に対してほとんど何も適応の努力をせず、

なんでも人のせいにするような人とは明らかに違うのですが、

精神科医が「適応障害」とつける場合、残念ながら後者の人も含まれることがあります。

 

もちろん、今回の深田恭子さんの場合は前者です。

ネットニュースをちらっと見ると関係者の話として次のように語られています。

「急に体調不良や精神的に落ち込むことがあった。ひどい時には

仕事をするのも困難になった。時間をおけば自然に元気になることもあり、

状態のいい時が続くケースもあったため、診察や通院はすることなく、

だましだまし仕事に穴をあけずに活動してきたようだ」

時間をおけば元気になるとかいい状態が続くこともあるなどは、うつ病とは異なります。

キャリアを重ね、周囲からの期待も大きいため、コロナ禍という要因も重なり、

神経をすり減らしながら適応しようと必死に頑張った結果、もうこれ以上無理、

という状態になったのでしょう。

 

38歳にしてこれだけ可愛らしさを維持しながら「深キョン」と呼ばれて愛されていると、

仕事量を調整するなどの環境調整ももちろん必要ですが、私は彼女自身が

「深キョンから少し脱却してもいいかな」と思えるようになれればいいなと思います。

きっと仕事柄プライベートでも緊張を強いられていた面も多いと思います。

心ないマスコミが周囲を張り込んだりしませんように。

ゆっくりと期限を決めずに飽きるくらいに休養してほしいと思います。

 

Written by まきメンタルクリニック  院長 西崎真紀

 

では今日は懐かしいLOVE PSYCHEDELICO のLast Smile を贈ります音譜