みなさん、こんばんは音譜

今日は少し晴れてましたが、うっとおしい雨が続きますね雨

 

さてさて、先日深田恭子さんのことを書いたのですが、

今度は大坂なおみ選手がうつ告白?(←敢えて?です)をしましたね。

ネットを見る限り寛容な論調で、それはとても良い風潮なのですが・・・。

 

2018年からうつで苦しんでいた、とのことですが、治療はしてるのでしょうかはてなマーク

そんなに長く苦しんでいるのに治療の話はまるで出てきません。

もちろん必要な薬を飲んでいるのかも不明です。

ですがそもそも彼女はひとことも「うつ病だと診断された」とか

「そのための治療を受けている」とは言っていません。

深田恭子さんの場合は「医師による診断」があり、休養を要すると

判断されたのでしょうが、そこが大きな相違点です。

 

彼女のTwitterにはこう書かれています。

 

The truth is that I have suffered long bouts of depression since the US Open 

in 2018 and I have had a really hard time coping with that

 

訳:私は2018年のUSオープン以来、長い間憂うつ気分に苦しみ、

  その対処に本当に苦労しました。

 

ここではDepressionを憂うつ気分とあえて訳しましたが、これを「うつ」もしくは

「うつ病」と解釈するのが本当に正しいのかは悩むところです。

しかし世間一般ではうつ病で苦しんでいたという受け止め方をしたようです。

 

そして少し冷静になったのかこのように続けています。

 

I'm gonna take some time away from the cort now,but when the time is right

I really want to work with the Tour to discuss ways we can make things better

for the players,press,and fans.

 

訳:しばらくコートを離れますが、しかるべき時が来たら、ツアーと協力して、

  選手、報道機関、そしてファンにとってより良い方法を話し合いたいと思っています。

 

私は最初にこの告白があるべきだったと思います。

 

プレスのくだらない質問に悩まされることがあるのはよく理解できます。

他のいろいろな会見を見ていても「なぜあんな質問を?」と

見ているこちらが不快になるようなくだらない質問をする記者は一定数います。

全力を出し切った試合で負けた後、「あそこでこうしてたら…」などと言われたら

じゃああなたがやってみなさいよと言いたくなったり、傷つくのも理解できます。

 

人前で話すのがもともと苦手だという彼女がセリーナウィリアムズに勝った時、

会場の多くのテニスファンがセリーナ・ウィリアムズが優勝することを期待していたため、

大ブーイングという異様な状況の中、彼女が泣いていたのは印象的です。

「みんなが彼女を応援したことを知っています。こんな終わり方でごめんなさい。

試合を見てくれてありがとう。プレーしてくれてありがとう」

涙ながらの彼女のこのとても素直で素敵なスピーチは人々に感動を与え、

会場の大ブーイングは瞬時に盛大な祝福へと変わりました。

この時の彼女はインタビュアーに「質問とは違うことを話したい」とちゃんと伝え、

自分の言葉で観客にも対戦相手のセリーナにも感謝を述べています。

 

優勝したのにサンバイザーを深く被り、大きな体を小さくしていた彼女。

それでも勇気を出して自分の言葉を伝えることで人々の反応は変化しました。

言葉の大切さをよく知っているはずの彼女がなぜ今回こうした騒動を起こしたのでしょう。

 

インタビューを受けたくないし、受けることは自分のメンタルに良くないと思ったなら、

事前に主催者側と話しあうべきだったのではないでしょうか?

一方的にインタビュー拒否をSNSで投稿し、実際に拒否した彼女。

 

これに対してジョコビッチやナダル、錦織圭などの現役トップ選手たちは

概ね大坂選手に理解を示しています。

「彼女を尊敬しているし、彼女の言うことはわかる」と理解を示した上で、

「メディアもこのスポーツには重要な一部、会見には応じるべき」としています。

彼らも会見で辛い思いや悔しい思いをたくさんしてきたと思います。

 

その後、4大大会の主催者が共同声明を出す異例の事態となりました。

主催者側の声明は次のようなものです。

大坂選手に考え直すよう促して対話を提案し、健康状態の確認と

支援の申し出をしたが全て拒否された。

大坂選手が今後も会見の義務違反を繰り返した場合、全仏オープンの失格処分や

多額の罰金、将来的なグランドスラムの出場停止処分もありうる。

 

この主催者側の声明の後も、彼女は公式Twitterに

「怒りは理解の欠如。変化は人を不快にさせる」と投稿。

さらにインスタグラムのストーリーに、『Juice Wrld』の作品のジャケット写真と楽曲を公開、

ジャケットには「Good bye&Good RIDDANCE」(さよなら、せいせいする)と記されていました。

まるで挑発するかのような行動です。

 

こうした経緯の後で大坂選手は上記のようなツイートをしたのです。

この憂うつ気分の告白で、批判を受けがちだった彼女の形成は一気に逆転。

主催者側もスポンサーも、そして多くの戸惑っていた一般人も一気に優しくなりました。

 

大ブーイングの中、涙ながらにスピーチした時と同じように空気は一変。

でもあの時とは明らかに違う違和感があります。

 

なぜ彼女は最初から主催者側と相談し、自分のメンタル不調やその経過を訴え、

インタビューがどれほど自分には苦痛かを伝え、回避させてもらいたいと

相談しなかったのでしょう?

その相談をしたにもかかわらず「義務だからインタビューを受けろ」と

にべもなく言われたのなら、そこで初めて問題提起すれば良かったのです。

 

イタリアのメディアも同様のことを伝えています。

最初からどうして言わなかったのか?と。

「Depressionで苦しんでいる」というメンタルの問題は重要なことです。

後出しじゃんけんのように、後から言われても違和感は残ります。

しかしどんなに違和感があっても、メンタルの問題を持ち出されると、

人々はそれ以上何も言えなくなってしまいます。言えない空気に強く支配されるためです。

もし言えば「弱っている人間に鞭打つ行為」と非難を浴びるでしょう。

 

しかし繰り返しますが、彼女は決して「うつ病で治療を受けている」とは明言していません。

精神科医のカウンセリングや治療を受けることがごく一般的なアメリカ、

特に彼女のように年収60億以上もある選手なら、精神科医ではなくても

メンタルトレーナーがいて当然ではないでしょうか?

 

実際錦織圭選手も試合後に

「誰にでも起こる症状だと思うし、僕もメンタルの先生がついていますけど

それですごい救われた部分もあるので。はやく治してほしい」

と述べています。

 

 

通常うつの人は大事なことを決定するのになかなか自分で判断できません。

また人に迷惑をかけてはいけないという気持ちが強いため、

自分が傷ついていることさえきちんと自覚できずに必死で頑張ります。

 

長い間憂うつ気分で苦しんでいたのは辛かっただろうと思いますし、

それを告白するのにも勇気は要ったでしょう。

しかしそんなに憂うつ気分の強い人が挑発するようなSNSを発信するなど

通常は考えにくいのです。

 

またうまくいかないと試合中にラケットを投げて壊したり・・・。

こうした行動はほかのテニス選手にもみられますが、

少なくともこうした行動を見て不快に思う人も多いでしょう。

私も学生時代に剣道をしていましたが、道具に八つ当たりはあり得ません。

 

そしてBLM (Black Lives Matter) に関して言うと、彼女はかなり率先して

アピールしていましたし、それを評価されてローレウス世界スポーツ賞2021を

受賞しています。とても名誉な賞のようです。

しかしBML運動もうつで苦しんでいる人には難しいかもしれません。

目の前の自分のことをやるだけでも大変なので、そこまで頭が回らないからです。

 

彼女の行動を見ていると憂うつ気分というより情緒の不安定さや怒りを感じます。

確かに人前で話すのも苦手そうだし、インタビューで気の利いたことを言うのも

苦手そうです。次々と質問を浴びせられると混乱したりもするのでしょう。

しかし憂うつ気分よりも衝動的な怒りのコントロールができていないと思います。

試合中でもポキッと折れたようになることがあります。

冷静さを保つことが苦手なのでしょう。

前のサーシャ・バインコーチは試合中にそんな彼女をうまくたしなめていましたが、

2019年2月に突如大坂選手からコーチを解任されたのは有名な話ですね。

 

それでも彼女の良さが出る時は2018年の優勝スピーチのように

彼女の飾らない素直な言葉は人を感動させる力があるのです。

気の利いたことやおしゃれな言葉を選ぶ必要などありません。

あの時の彼女が人々を感動させたのは、彼女の謙虚さと素直さだと思います。

 

今回、残念ながら彼女にはそうした謙虚さは感じられませんでした。

SNSで一方的にインタビュー拒否、試合後言葉通りにそれを強行。

それは精神科医からみるとうつの人の行動とは異なります。

なんというか・・・未熟さや衝動性を感じます。アンガーマネジメントが必要というか。

 

一流のアスリートとは言え、まだまだ23歳。

精神的に成長していないのでは?という声もありますが、

日本が世界に誇るスケートの羽生選手などは若い時から非常に礼儀正しく、

特にオリンピックの時など重圧を跳ね返す精神力です。

海外のプレスのインタビューには可能な限り英語で答え、

演技の後には必ずお辞儀して「ありがとございました」と言っています。

もちろん、誰もがあんな羽生選手のような芯の強さは持てないでしょう。

だからこそ彼が一流として愛され、注目されるのです。

 

彼女の周囲に今回のSNSの投稿についてアドバイスする人はいなかったのでしょうか?

若くして60億以上ものものすごい大金を稼ぐようになった彼女は

下手すると周囲の大人たちの金づるになりかねません。

周囲の誰もが彼女のご機嫌取りに走り、たしなめることをしなければ、

この先の彼女はすぐに壁に突き当たってしまうでしょう。

 

そして大会は「Depression」で辛いし棄権すると述べる一方で

50日後に迫っているオリンピックには意欲を燃やしていると言われると、

ますます違和感しかありません。

正直そう思っている人は結構いると思うのですが、彼女が

I have suffered long bouts of depression・・・

とSNSで発信したために誰も違和感を公然と口にできなくなりました。

 

もちろん、Depressionで苦しんでいる人をみんなが温かく見守ろうとするのは

とても素晴らしいことです。素晴らしいことなんですが・・・

きっと私と同様もやモヤモヤしてしまう人もそこそこいるのではないでしょうか。

 

 Written by まきメンタルクリニック                            院長 西崎真紀

 

では今日はドラマ「カルテット」の主題歌「おとなの掟」を贈ります音譜

初めて聴いたとき「椎名林檎っぽいなぁ」と思ったら椎名林檎の曲でしたラブラブ