みなさん、こんばんは音譜

 

札幌出張は信じられないくらいの暑さでしたが、

今日からやっと普通の5月の気温に戻るみたいですね汗

 

それはさておき、今朝は怖ろしくて悲惨なニュースが飛び込んで来ました。

川崎市登戸で起きた児童らの殺傷事件です。

スクールバスを待つ児童の中に刺身包丁のような刃物を2本持った男が乱入。

現時点でわかっている情報では、幼い子供と、

おそらく通りすがりに巻き込まれたと思われる男性の命が犠牲になりました。

 

犯人の男性も自分の首を刺して死にましたが、

正直なところ、死にたかったら人を巻き添えにするな!と思います。

それも幼い子供を・・・。

 

NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学客員准教授という肩書の

藤田孝典という人が

川崎殺傷事件「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい

というメッセージを記事にしていますが、全然賛同する気になれません。

社会は自分に何もしてくれないという怨恨の気持ちを持つことは

あるかもしれませんが、だからと言って幼い命を犠牲にしていいことなど

あるのでしょうか?記事の中に

「類似の事件をこれ以上発生させないためにも、困っていたり、辛いことがあれば、

社会は手を差し伸べるし、何かしらできることはあるというメッセージの必要性を

痛感している。」という部分があります。

もちろんこうしたメッセージを発信することは大切でしょう。

でもこうしたメッセージをきちんと受け取れずに逆恨みするのは違います。

この人は自分の子供が犠牲になってもこう言えるのでしょうか?

 

映画「アフタースクール」の中で、主人公は悪の道に転落し、社会を恨んでいる

同級生に対して「お前の人生がうまくいかないのは学校や社会のせいじゃなく、

お前自身のせいだ」といったことを伝えます。

もちろん世の中努力したらすべて報われるなんてきれいごとはいいませんが、

うまくいかないから他人を自分の不幸に巻き込もうとするのは違います。

 

こういう事件があると必ず自称「人権派」という人が出てきてしたり顔で

「罪を憎んで人を憎まず」的なことを言ったりしますが、

自分の大切な家族が犠牲になってもそういえる人でなければ、

それは単なる自己満足や欺瞞でしかないと思うのです。

遺族や被害者、被害者家族の前でもこういうことが言えるのか?と問いたいですね。

 

この事件で池田付属小学校児童殺傷事件を思い出した方も多いと思います。

2001年6月8日に起こったあの事件は世間を震撼させました。

当時病院勤めだった私は、入院患者さん用に設置されたテレビでニュースを知り、

医局に戻ると珍しくテレビがついていて、医師たちはニュースにくぎ付けでした。

 

あの時の犯人、宅間守は生きていましたが、

取り調べに対して「死にたかったからやった」と述べたらしいです。

それなら一人で死んでほしいと思わずにいられませんでした。

 

今回のカリタス小学校のことはよくわかりませんが、

前回は宅間守が「エリートの卵を刺し続けた」と述べているように、

社会の中でエリートとされる人たちへの身勝手で理不尽と言える怨恨感情を

非力で幼い子供たちに向けて発散させたという印象が強いですね。

今回の犯人もそれに似た感情なのかもしれませんが、なんとも理不尽ですね。

 

宅間守の時、最初に思ったのは「これは統合失調症じゃないな」ということです。

こういう精神疾患のふりをして罪を免れようとするのは本当に卑怯で許せないし、

統合失調症で苦しんで、頑張って治療している人に失礼極まりないです。

 

今回の犯人はもう死んでしまったので、動悸を探ることも、

責任を追及することももはやできません。

遺族や被害者の気持ちを考えるとこれがいいのかどうか・・・。

犯人が生きていて、裁判で宅間守のように遺族に向かって悪態をついたら

それはそれで怒りで頭の中が沸騰するかもしれませんが、

死んでしまっても怒りのぶつけようもありませんし。

 

さて、今回ネットの反応などを見ていると、まだ状況ももわかっていないのに

「こんな奴に精神鑑定はいらない!」という意見が多いように感じました。

感情論的にそう言いたいのはよくわかりますが、

少し冷静に考える必要があると思います。

 

今回はすでに犯人が死亡しているので、精神鑑定は不可能ですが、

精神鑑定をすることは大切なことではないでしょうか?

 

池田付属小学校児童殺傷事件の時も2回の精神鑑定が行われています。

2回ともにパーソナリティ障害は認められるが統合失調症ではなく

責任能力を減免するような精神障害はない」という鑑定結果が出ています。

また血液検査と尿検査から精神科での処方薬も内服していないことがわかり、

後に宅間は詐病を認めています。

 

昔は弁護士が「精神鑑定」を叫ぶと罪が減免されるといういい加減な鑑定も

されていたかもしれませんが、そうじゃないんだという鑑定結果が出て以来、

詐病も通用しなくなっています。

ですから精神鑑定はとても重要なのです。

「精神鑑定」=「責任能力の減免」ではありません。

ちゃんとした責任能力があることを証明する手段でもあるのです。

 

感情論や自分の思い込みで「精神鑑定なんかするな!」というのは

極端な言い分ではないでしょうか。

だいたい殺人をする時点で正常な人などほとんどいませんからね・・・。

 

いずれにしても池田付属小事件の時と同様、悲惨な光景を目の当たりにした

子供たちのこころの傷を考えると胸が痛みます。

適切な時期に適切なフォローをしなくてはなりませんし、

こういうことこそ税金を投入すべきではないかと思います。

そしてマスコミは当事者たちを追い掛け回すようなことをしないで欲しい。

 

亡くなられた方のご冥福をお祈りし、被害にあわれた方たちの生活が

一日も早く平穏を取り戻せますように・・・。

 

Written By まきメンタルクリニック院長 西崎真紀