みなさん、こんにちは
お正月もあけ、早くも1月下旬。ブログもほぼ更新せずに過ぎました
ところで昨年4月に大塚製薬から発売された新しい抗精神病薬レキサルティ
19日に和歌山でレキサルティの有用性ということで講演して来ました。
和歌山って大阪から特急で1時間程度で意外に近いですね。
レキサルティはエビリファイの後継薬という位置づけでの発売ですが、
いわゆる第二世代の抗精神病薬である非定型抗精神病薬が発売されて20年ほど。
初めての非定型抗精神病薬がリスパダールでした。
10年ほど前に発売されたエビリファイ(アリピプラゾール)は
初のドパミンパーシャルアゴニスト(ドパミン部分作動薬)として、
当初はいわゆる統合失調症のみに適応を取っていたお薬です。
画期的な薬剤ですが、薬剤の特性上、そこそこしっかりした投与量でなければ
かえって混乱を引き起こしかねないのに、大塚製薬が少量から投与開始して
徐々に増量という投与方法を添付文書に記載したために、
少量投与した統合失調症の患者さんが変に元気になり、ザワザワしてしまい、
当初はあまり評価されないどころか、不評だったお薬です。
当時すでに先行発売されていたアメリカでは、日本の初期投与量は
うつ病の補助療法の用量だったわけですから当然と言えば当然なのです。
しっかりと自分で勉強していれば、この投与量のおかしさに気付くはずなのです。
しかし中枢神経領域に初めて参入した大塚製薬の社員たちも、
こうした用量設定で精神科医たちにプロモーションしてしまったため、
それを鵜呑みにして痛い目にあった精神科医も多いようです。
しかし一番迷惑を被ったのは患者さんであることは間違いありません。
いくら製薬会社の社員が言っても、やはり自分でしっかりと勉強すべきなのです。
10年も経つと精神科医たちもエビリファイの使い方について習熟したようです。
さらにエビリファイの液剤は不安時やイライラ時の頓服に非常に効果的です。
まきメンタルクリニック(←リンクあり)でも、パニック障害などいろいろな方に
エビリファイ内用液を頓服で処方しており、とてもよく効くと好評です。
私は液剤の使用方法などについて全国各地で講演させていただきました。
その後持効性注射剤が発売され、患者さんは4週間に1度注射すれば、
内服しなくてもいいという方法も可能となりました。
(もちろんそれまでに単剤にしておくことが条件です)
まきメンタルクリニック(←リンクあり)でも現在8名の患者さんがこの方法で、
内服フリーの人、眠前だけ内服の人などいますが、皆さんには好評です。
では、レキサルティはエビリファイの後継薬だと書きましたが、
エビリファイとはどう違うのでしょうか?
ひとことで言えば、副作用がより少なくなり、セロトニンにもしっかり作用するので
抗うつ効果や抗不安効果が高まったということでしょうか。
しかしエビリファイで副作用が出なかった人もレキサルティに変えると
レストレスレッグス(むずむず足)のような副作用が出たり、
若干体重が増加したり、必ずしも副作用が劇的に減ったとも言えません。
そもそもエビリファイは長期の内服を見据えた副作用の少ない薬ですから、
そこから格段に副作用を減らすというのも難しいのかもしれません。
ただ、エビリファイを内服していた人がレキサルティに変えると、
「活力が湧いてきた」という表現をされた方が4~5人おられ、
いわゆる陰性症状などにはより効果的なのだろうと思われます。
薬の特性を考えると、統合失調症だけではなく、うつ病やパニック障害、
強迫神経症など幅広く使えそうなお薬ですね。
強迫神経症は治療が難しい疾患のひとつですが、
実際にレキサルティが非常に有効な方もおられます。
強迫神経症とは「くだらない、無意味だ」と思ってもやめられない
思考や行為を病的に繰り返すことです。
たいていの場合、周囲の人も自分の儀式的な行動(本人が汚いと
思うものに触った人に必要以上に入念な手洗いを強要するなど)に
巻き込んでしまうので、本人だけにとどまらず、周囲も疲れてしまいます。
抗うつ剤が第一選択薬として使われますが、治療は難しいことが多いです。
どの治療でもそうですが、強迫神経症の治療の際にも、
どの程度まで症状と折り合えるか?を医師・患者双方が
予めきちんとゴールを設定しておかないと、症状ゼロを目指したりすると
治療がより困難に、苦痛に感じることになってしまいます。
薬だけでなんとかしようとする治療には限界があると思います。
Written by まきメンタルクリニック 院長 西崎真紀
では今日は懐かしいwow war tonight を贈ります