ハイトーン発声習得はもちろん、歌唱技術としても重要度の高いウィスパーボイスという発声法があります。この記事ではそのウィスパーボイスについて、仕組みの考察と練習法やポイントについて考察したいと思います。

”ちなみにこの記事は後半部分までが仕組みや定義の説明などすごくマニアックな内容になっております。声を仕組みから理解したい!という方にはお勧めですが、そうでない方にはただ難しいだけに感じられるかもしれないので後半の「ウィスパーボイスの練習法」から読んでもらえれば大丈夫かもです。”

 

ウィスパーボイスの定義
一般的に言うウィスパーボイスとは息漏れのある地声の事を指します。
ですがこのウィスパーボイスを先ほど言ったただの息漏れのある地声として発声しようとすると、歌で使い物にならないくらい息が沢山出てしまいます。
もちろん表現の一環としてその様な声も使いますが、基本的には飛び道具の扱いです。
そのためここでは歌に使えるウィスパーボイスの発声法と仕組みを解説します。(ちなみに先ほどの息漏れの激しい地声の事は息漏れ声という名前で扱っていきたいと思います)
 
裏声とウィスパーボイス
正しい地声/裏声についてとその仕組みという記事で、裏声の仕組みについて解説しました。要約すると
・声帯が伸展することで声帯が薄く突っ張り、筋肉部分の振動が無くなって行く
・筋肉部分が振動しなくなるにつれ徐々に粘膜部分のみの振動となり、裏声っぽい声質になっていく
・完全な裏声の場合、息漏れが激しく地声成分の全くない声になる
この様なものでした。
 
次にウィスパーボイス(息漏れ声の事では無いです)ですが、これは端的に言うと裏声成分の非常に強い声となります。言い換えるとかなり伸展筋群優勢なミックスボイスとも言えるでしょうか。
まずはウィスパーボイスの例を見てみましょう。
世界一の歌唱力ともいわれているアメリカのゴスペルシンガー、デビッドフェルプスです。
この動画の0:27~0:30で使われている声なんかがいわゆるウィスパーボイスという物です。
声質としては非常に裏声に近い声で、かなりソフトに発声されているのがわかります。
また、先ほどの息漏れ声と違い、こちらは息の消耗そこまで多くないため
ある程度長いフレーズもこのまま歌うことが出来ます。(もちろんバリバリの地声ほどは息は保ちませんが)

 

ウィスパーボイスの仕組み

ミックスボイスとミドルボイスの違い/3声区論についてという記事の後半でミックスボイスの仕組みについて解説しましたが、基本的にはそのミックスボイスと仕組みは同じです。改めて仕組みとしては

・伸展筋群により声帯が薄く引き延ばされ、地声成分が無くなっている

・完全な裏声と違い、内筋も少しは働いている

この様な感じでしょうか。

また、歌の中で使うことを考えると閉鎖筋群の働きが無いと息漏れが激しくなりすぎるため、閉鎖筋群も適度に働いている状態となります。(各筋肉の役割や名称は内喉頭筋とその働きについてを参照)

まとめると正しいウィスパーボイスとは

地声発声時(内筋作動時)に伸展筋群優勢な状態を作り(声帯が薄くなり)、かつ閉鎖筋群の適度な働きにより息漏れが少なくなった声

と言った感じでしょうか。

 

また上の適度とは、働きすぎると裏声の練習法と力みのない音程上昇で紹介したコーディネートファルセットの様な声になってしまいソフトな声質でなくなってしまう、かつ働きが弱すぎると息漏れが多すぎて歌で使いづらくなるためケースバイケースで程度を変化させるという意味です。

 

ウィスパーボイスの練習法

ウィスパーボイスのの習得において必要なステップとしては

①力みのない音程上昇

②それを地声発声時にも行えるようにする事

③力みのない地声のハイトーンに閉鎖筋群の働きを加えて、息漏れを無くしていく

以上の3つになります。(声質によって③の塩梅を調整しながら歌うことになります)

また、この③をクリアできればミックスボイス習得の第2ステップまでが完了したとも言えます。(ミックスボイス習得についてはミックスボイスについてのよくある誤解と私的考察(後半)を参照)

つまりウィスパーボイスとは地声成分の弱いミックスボイスであり、ミックスボイスの第2段階の声を使う発声法と言う事です。

 

まずは①から。

これは裏声の練習法と力みのない音程上昇で紹介したピュアファルセットの練習が必要です。ピュアファルセットの習得が進むほど、高音発声時の力みが減っていきます。

 

次は②です。

これには声の分離と融合についてという記事で紹介している声区融合という訓練が必要となります。簡単な練習法としては

力みのない裏声と、裏声と同じ声量の地声声を切らずに一息の中で交互に発声する

と言う練習がお手軽でかつ効果的です。

最初は地声と裏声の境目が明確でひっくり返る感覚がありますが、上記の練習を繰り返すと境目が徐々に無くなって行き、やがて完全に落差を感じずに行き来出来るようになってきます。そうすれば地声発声時にも脱力しながら音程を上げることが出来るようになっていきます。この段階がミックスボイスの第1段階です。

 

最後に③ですが、これに関してはまず裏声の練習法と力みのない音程上昇で紹介したコーディネートファルセットの練習を行うのが良いでしょう。

コーディネートファルセットを鍛えることで裏声発声時の息漏れをカットすることが出来るようになってきます。そうなったら次は②で紹介した練習法を

出来るだけ息漏れのない裏声⇔同じ声量、息漏れ具合の地声

と言う風に繰り返すことで、地声発声時にも脱力しながら息漏れをカットすることが出来るようになります。この段階がミックスボイスの第2段階となります。

 

まとめ

・ウィスパーボイスとは裏声に近いミックスボイスを、息漏れを少なく発声した声だよ

・正しいウィスパーボイスの習得は、そのままミックスボイスの習得に繋がるよ

・ここで扱った息漏れ声もそれはそれで使うから、ダメな声と言うわけでは無いよ

・声帯の厚さが薄くなる(伸展筋群が優位になっていく)ほど声質が裏声っぽくなっていくよ

 

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