ここのサイトを見ていただけている方は、その多くがボイストレーニングについて調べている方だと思います。
そういった方であれば一度は目にしたことがあるであろう「ミックスボイス」「ミドルボイス」「三声区」などと言った言葉。
実際これらの言葉はどの様なものを指しているのでしょうか、その違いは何でしょうか。
今回はそんな内容をまとめてみたいと思います。(上記の単語は人によって様々な意味の使われ方をしています。ここではあくまで僕の見解をまとめます)
”ちなみにこの記事はすごくマニアックな内容になっております。声を仕組みから理解したい!という方にはお勧めですが、そうでない方にはただ難しいだけに感じられるかもしれないので読まなくても大丈夫かもです。”
声区とは
まずは声区というものについて考えていきましょう。
声区とは声を何らかの基準で分割したものであると言えます。
声質によって分けられるものが地声/裏声として一番馴染みのある分類でしょうか。
三声区について
次は、上にも書いてある三声区について考えていきます。
三声区とは、声を
チェストボイス/ミドルボイス(ここにミックスボイスが入るという人もいる)/ヘッドボイス
上記の3つに分類する分類法の事です。四声区論や五声区論などもありますが、一般的にはこの三声区論が最も使われている分類法かと思います。
ではこの3つの声区ですが、どの様な基準で分けられている物なのでしょうか。
よく言われているものとしては
チェストは地声、ヘッドは裏声、ミドル(ミックス)がその間の声
という見解が多いように思います。実際僕もボイトレを習い始めたころはこの様に覚えました。
声帯削減と声区について
上記の分け方は、多くのボイストレーナーが説明に使用するものかと思います。
ですが、実際には上の分け方ではあやふやな部分や、矛盾する部分が多く出てきます。
そこで、現在僕の考える三声区論として
声帯削減による声帯振動の長さの違いから声を分類する
というものを紹介したいと思います。
まずは声帯削減について。
音を高くしていくと、声帯の振動する長さが3/3⇒2/3⇒1/3という風に短くなって行き、それに応じて声質も変化するという現象があります。これを声帯削減と言います(詳しくは音程が変化する仕組みについて(発声法編)という記事の中ほどにある声帯削減と三声区についてを参照)が、この声帯削減の段階に応じて
3/3振動時…チェストボイス
2/3振動時…ミドルボイス(ミックスボイスではありません)
1/3振動時…ヘッドボイス
と言う風に声を分類する方法が、僕の考える三声区論です。
各声区ごとの特徴
次は各声区ごとの特徴を見てみましょう。また、下記の解説でミックスボイスと言う単語を頻繁に使用しますが、ミックスボイスについての解説は最下部で行いますので、ちょっとだけ我慢してこちらからご覧ください。
また、各筋肉の働きや名称に関しては内喉頭筋とその働きについてと言う記事にまとめますのでそちらをご覧ください。
・チェストボイス
チェストボイスは低音発声時に出る声です。伸展筋群があまり働いておらず、声帯に厚みがある状態での発声となります。
その為声質としては重い・太い・下の方で響くなどと言ったイメージが当てはまります。一般的には地声および地声に限りなく近いミックスボイス発声時に出ることが多いです。(裏声発声時にもチェストボイスを出すことは出来ますが、あまり低すぎる音域で裏声を使うシーンが無いため一般的ではありません)
また、人間は声帯の振動部分が短くなるにつれ、響きの位置が
胸~口腔内⇒上顎~眼球部分⇒頭頂部~頭上
と徐々に上に上がって行くように感じます。
そのため一般的にチェストボイスは胸で響かせるイメージで発声しましょうと言われています。
またチェストボイスを裏声やウィスパーボイスで発声した場合、響きの位置は主に口腔内中部~上部になる事が大半です。
これは声帯の厚さが薄くなればなるほど、響きの位置が上に向かって縮小していく様に感じるからです。(詳しくは声帯の厚さと正しいウィスパーボイスについてを参照)
・ミドルボイス
ミドルボイスは中/高音発声時に出る声です。ボイストレーニングを学ぶ人の多くが目指す声でもあります。
声帯削減が行われ、声帯の振動する長さが2/3に短くなった時にこの声になります。
一般的に完全な地声で出すことは難しく、ある程度ミックスボイスになっていないとこの音域に入る事は出来ません(中には地声でミドルボイスを出す人もいますが、ミドル高音になると声割れが起きたり裏返ったりします)。
ミックスボイスとミドルボイスを混同して考えてしまう人が多いのは、この様に大抵のミドルボイスがミックスボイスで発声される為です。
実際には地声に近いミックスボイスや裏声に近いミックスボイス、裏声などで出される事が多いです。
響きの位置はチェストボイス発声時の上端である口腔上部から少し上がり、上顎部~眼球付近の高さに感じる事が多いです。一般的に高い声は目線の高さで発声しようと言われるのはこれが理由です。
また、声質が裏声に近づけば近づくほど上部である眼球付近のみの響きになっていきます。
・ヘッドボイス
ヘッドボイスは高音発声時に出る声です。声帯削減により振動の長さが1/3に短くなった時にこの声になります。
地声で出す事はほとんど不可能で、発声のレベルが極上の人でもようやく地声にやや近いミックスボイス、大半の人はほとんど裏声でしか発声する事が出来ません。
響きの位置は頭頂部~頭上(頭のちょっと上くらい)といった感覚です。学校の授業などで声を頭の先から真上に飛ばすようになどと言った指導を受けた方も多いのではないでしょうか。
声質が地声に近いとオデコや脳みそで響くイメージ、裏声に近いとツムジや頭上で響くイメージとなります。
三声区の響く場所を図でまとめたので、参考にしてみて下さい。
ミックスボイスについて
上の解説で、それぞれの声区の特徴や三声区論についてわかりました。
それでは本題、ミックスボイスとは何ぞやと言うところに入りたいと思います。(お待たせしました)
正しい地声/裏声についてとその仕組みという記事で地声と裏声について解説しましたが、簡単にまとめると
・裏声…伸展筋群が働いた声
・地声…伸展筋群と内筋が働いた声
と言う風なものでした(本当はもっと色々働いていますがややこしくなるので割愛、詳しくは上の記事を参照)
ミックスボイスとは端的に言うと地声と裏声の間の声であると言えます(そのままですね汗)
もともと伸展筋群の働きで声帯が引き延ばされて音程が上がり、それによって筋肉部分が硬直し粘膜のみが振動を起こすようになって裏声が出るのですが、この硬直を緩ませて筋肉部分の振動を起こし地声の声質を作る働きが内筋です。
その内筋の働き具合に応じて声質が地声っぽくなったり裏声っぽくなったりしますが、完全な粘膜振動のみの声を裏声、内筋など地声系の筋肉のみの声を地声、残りの声をすべてミックスボイスと呼ぶことが出来ます。
ただそれだとあまり声の分類を行う意味がない(分類が極端で雑すぎる)ため、当サイトでは地声系の筋肉が優位になりすぎておらずきちんと伸展筋群が働いており、ハイトーン発声に繋げられる声をミックスボイスとして扱います。
また、極論を言えば基本的に伸展筋群が働いており、かつ内筋が少しでも働いていればすべてミックスボイスであると言えますが、その中で内筋がしっかり働いて地声らしさが強い声を地声に近いミックスボイス、あまり内筋が働いていない声を裏声に近いミックスボイスと呼んでいます。
ミックスボイスとミドルボイスの違い
ここまでの説明で、ミックスボイスとミドルボイスが全くの別物であることがわかりました。ですが長文でややこしくなってしまったのでここで2つの違いをまとめておきましょう。
ミックスボイス…声質を指す用語。極端に地声だったり裏声だったりしない大半の声の事。筋肉のバランスによって地声っぽくなったり裏声っぽくなったりする。
ミドルボイス…音域を指す用語。声帯削減によって声帯振動の長さが2/3になった時の声。上顎部~眼球付近での響きを感じる声で、声質としては主に地声に近いミックスボイス~裏声で発声される。
いかがでしょうか、なんとなくまとめられましたか?
改めて自分がボイストレーニングで何を習得したいのかを整理し、現状を理解したり次の目標やステップを確認するための材料として覚えておくと良いかもしれませんね。
まとめ
・ミックスボイスとミドルボイスは全然違うものを指す用語だよ
・ミックスボイスは地声/裏声のバランスによって生まれる声質の事だよ
・ミドルボイスは地声裏声関わらず高音になるにつれて変化していく声区のうちの一つだよ
・ミックスボイスは出せるけどミドルボイスに移行出来ていなかったり、ミドルボイスには移行出来るけどミックスボイスが出せなかったりする人もいるから、状況に応じた練習が必要だよ
・ちなみに僕は三声区論者です。が、別枠でホイッスルボイスと言うものもあるのでそれも含めると四声区論になっちゃうのかな?汗
・結局ミックスボイスとかミドルボイスとかは言葉の定義づけの話だから、知らなくても発声は上達します(知ってた方が自分で調べたり勉強しやすいけどね)
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