将棋の藤井聡太さんが八冠を達成され、すでに竜王位の防衛もされたとか。

 

 これは藤井聡太さんとタイトル戦を戦った人のお話し。当時14才にしてプロ棋士になった藤井さんに十才も年上でありながら、対戦をお願いしたらしい。当時、一流のプロ棋士が中学生に頭を下げて試合をお願いしたことについて、その方は「強くなるのに一番邪魔なものは無駄なプライドだ」と言われた。

 

 実は、私も似たような経験がある。ある同業の先生に教えを乞うた時に、その先生は私を多少なりとも知っておられたようで、

 

「中村先生が私に頭を下げられるのですか?」と言われた。

 

その疾患について、一層の改善策を知りたかったので、私は、

 

「患者さんのためなら、私は誰にでも頭を下げます」

 

と申し上げた。その方はいたく喜んでくださり、手ほどきを下さった。今から数年前のことだ。その疾患の治療が、その手ほどきによって進んだことは言うまでもない。そして私の方でも新たな手技が見つかった時には、その方にご連絡している。そうするとまたその方から示唆を下さる。

 

 そんなやり取りの後、その方は京都在住の患者さんから問い合わせがきたら、快く私にご紹介くださるようになった。そしてその方が快癒され、その方のご家族がこぞってこられたり、そういうお話もしている。

 

 プライドとは、いったい何であるか?

 

 将棋の人と同じ。

 

 患者さんの改善を邪魔するプライドなど、ただの虚栄だ。