子供の頃、家にあった
おさがりのおさがりの童話
ニヒルな哀愁がなんとも言えず
また
長新太さんの絵を
好きになったきっかけでもある
思い出の1冊です。
…
キー子はひとり
親もなければ、
きょうだいもない。
家もなければ、
しんせきもない。
学校へもいかないし、
ともだちもいない。
冒頭からひとりで
警察官と対峙し、
ピストルと千円を奪い
逃げる
強盗のおじいさんと
やりあう
ねずみ色の男の
腕をちぎる
(夢を見た?)
同い年くらいの
男の子に出逢う
失望する
くつみがきになって
得た千円で
タクシーにのり
ホテルへ行く
ひともんちゃくして
外人のおばあさんから
親切な声がけをもらうも
またひとり
屋台のおじさんに
出逢ったあと
ピストルを自分に向ける
…
親子にひと晩とめてもらって
朝ごはんを食べる
ほしいのは
過去じゃない
そうよ、未来だわ
と言う
海を見に行く
そして
松林のむこうの
鉄筋コンクリートの
かべがまっ白の、
りっぱな家を指す
お手伝いさんになって
お菊さんに世話になるけれど
またひとりになって
ピストルも無くして
のち
ツキ子と出逢って
あんみつを食べる
しょぼしょぼの
おじいさんと会話もしたけれど
またひとり
ヒッチハイクで
おおきな
おおきな
トラックに乗り込む未来
これからも
ずっとひとりで
生きていかなければならない
ちゃんと見ていかなくてはならないのだ
…
私は今
この本に出てきたような
白い鉄筋コンクリートの家に
住んでいます
1971年発刊以前の建築の。
長さんが描かれた
建物への憧れ
大凡それが叶った、
幸せなこと
書き連ねたキー子の“今”は
ヘビーに思えるけれど
寄りかからない
賢いキー子に
これからまた巡り来る運
掴んだり手放したり
どんな未来を描いていくのか
空想は広がります。