時は2012年9月
まだ夏の残暑が厳しい頃
今の会社に新人として入った僕はボロ雑巾のような日々を過ごしていた
世間からは「ゆとり」と呼ばれる僕の世代
何もゆとり世代に生まれたくて生まれたわけじゃないのに・・・
と思いながら、同世代のスポーツ選手、当時楽天のマー君や、サッカーの香川などの活躍を見て、自分の将来を思案していた。
「僕も将来はどうなる・・・・?」
漠然とした不安に襲われながら、とりあえず今できることを精一杯して、早く一人前になろう!
そんな思いを抱えながら歩いていた帰り道、駅のホームで足がとまった。
何か満たされない・・・
心も体もどこかしっくりこない・・・
どこからともなくくる疲労を感じながら、ふと誰かに体を預けたくなった・・・
「マッサージでも行ってみるか!?」
その時、初めてケータイでマッサージ店を検索した。
僕のイメージでは、マッサージというと、おじさんやおばさんがしてくれる痛そうなマッサージを思い浮かべていたが、
調べてみると、いろんなタイプのマッサージがあるのに驚いた。
「若い女性がやってくれる店もあるのか・・・」
男子校出身で女性に不慣れな自分にとって、一瞬の戸惑いがあった。
少しの期待感と羞恥心が僕の心を揺すった
「どうせマッサージしてもらうなら、女性にやってもらおう」
そう決心し、近辺を検索、一軒の店が目に留まった。
その名は「芯寧堂」
昼間は近所のおじいさんやおばあさんも訪れるというこのお店
どうやら数年前まで整体院をやっていたところが、あらたにアロママッサージを始めたようだった。
健全そうな雰囲気に少し安心し、電話をかけてみる。
トゥルルル トゥルルル♪ 「はい もしもし?」
声色からおそらく自分とそう変わらないであろう年の女性が電話に出た
僕:「あっ・・・あのー、予約をしたいのですが、、、30分後くらいは大丈夫でしょうか?」
嬢:「はい。大丈夫ですよ!コースはどうなさいますか?」
コースか・・・しまった。何も考えていなかった・・・・・
てかどんなコースがあるのだろうか??
僕:「うーん・・・そうですね。。。ちょっと良くわからないので、お店に行ってから決めます。」
嬢:「はい。ではお待ちしてます。」
少しの会話だったが、僕にはとても緊張するものだった。
やはり何にしても初めの一歩というのは緊張するものである
この感じは・・・何かに似てるな・・・
そう僕の脳裏によぎったのは高校3年の夏のことだった。
3年間野球部に所属し、ベンチどころかスタンドを温め続けていた僕
エースで四番!どころか、エースの荷物番!状態であった(涙)
そんな僕の夏も埼玉県大会の3回戦で幕を閉じ、早すぎた夏の終わりに時間を
持て余している頃だった。
引退した高校球児の悩みといえば、そう!髪型である。
坊主一辺倒でよかった3年間とは違い、新しい髪形に挑戦しなければならないのである。
めんどくさいなら坊主でいいじゃん?と思う人もいるかもしれないが、引退後も坊主=敗者という謎の風潮が野球部を支配していたので、仕方なく新しいヘアースタイルを模索することとなった。
どうせやるならカッコいい髪形がいいな!
そう思い、坊主の分際にも関わらず、コンビニでヘアカタログとワックスを購入し、ひとり部屋で新しい髪形に思いをはせていた。
そして、ひと月が過ぎ、夏休みの終わりに差し掛かるころ、僕は美容院に行こうと決意した
初めての美容院・・・
美容院でのオーダーの仕方や、過ごし方に全く知識が無かった僕は、2ちゃんねるの美容院初心者スレをのぞいてみた。
そこには
「マイシャンプーをもっていかないと恥かくぞ!!」
「菓子折り持参は常識だからな!!」
等と今思うと笑っちゃうくらいの嘘が占拠していた。
どうしていいかわからず恐る恐る美容院に電話をしてみた。
僕:「あのー、予約をしたいのですが、、、今週日曜は大丈夫でしょうか?」
嬢:「はい。大丈夫ですよ!メニューはどうなさいますか?」
メニュー?なんじゃそれ!!!!
僕:「えー初めてなのでよくわからないのですが、取敢えず・・かっ・・・か・髪を切ってほしいです!」
嬢:「ふふっ!ではカットのみのご予約でよろしいですね!」
僕:「あっ!はい!よろしくお願いします。」
そんなこんなで初めて美容院に電話を掛けた日の思い出が、5年後の自分にフラッシュバックしてきたのである。
「あの時と何も変わっていないな自分・・・」
電車に揺られながら、成長の無い自分にがっかりしていた。
ほどなくして目的地の駅に到着
ケータイ片手に地図を見ながら歩いてみるとそれらしい店を発見!
あたりを見回してみると、近所の大学の生徒たちが、あちこちから往来してくる。
「うわー入りづらいな・・・」
その場でたちすくみ、10分ほどが経っただろうか
ついに人影がなくなる瞬間が訪れた。
今だ!!!
勇気を振り絞り、店のインターホンを押した!
中から少しぽっちゃりした嬢が現れ、薄暗い店内に通された。
この時小生23歳
初めて回春マッサージの世界に足を踏み入れた瞬間であった。
~つづく~