すてきなすてきなキー子 | 森のいろ

森のいろ

色・こころ、時々うさぎ



子供の頃、家にあった

おさがりのおさがりの童話


ニヒルな哀愁がなんとも言えず

また

長新太さんの絵を

好きになったきっかけでもある

思い出の1冊です。



キー子はひとり


親もなければ、

きょうだいもない。

家もなければ、

しんせきもない。

学校へもいかないし、

ともだちもいない。


冒頭からひとりで

警察官と対峙し、

ピストルと千円を奪い

逃げる


強盗のおじいさんと

やりあう


ねずみ色の男の

腕をちぎる

(夢を見た?)


同い年くらいの

男の子に出逢う

失望する



くつみがきになって

得た千円で

タクシーにのり

ホテルへ行く

ひともんちゃくして

外人のおばあさんから

親切な声がけをもらうも


またひとり


屋台のおじさんに

出逢ったあと



ピストルを自分に向ける



親子にひと晩とめてもらって

朝ごはんを食べる


ほしいのは

過去じゃない

そうよ、未来だわ

と言う



海を見に行く


そして



松林のむこうの

鉄筋コンクリートの

かべがまっ白の、

りっぱな家を指す


お手伝いさんになって

お菊さんに世話になるけれど


またひとりになって

ピストルも無くして


のち


ツキ子と出逢って

あんみつを食べる


しょぼしょぼの

おじいさんと会話もしたけれど


またひとり


ヒッチハイクで

おおきな

おおきな

トラックに乗り込む未来


これからも

ずっとひとりで

生きていかなければならない

ちゃんと見ていかなくてはならないのだ



私は今

この本に出てきたような

白い鉄筋コンクリートの家に

住んでいます

1971年発刊以前の建築の。


長さんが描かれた

建物への憧れ

大凡それが叶った、

幸せなこと


書き連ねたキー子の“今”は

ヘビーに思えるけれど


寄りかからない

賢いキー子に

これからまた巡り来る運


掴んだり手放したり

どんな未来を描いていくのか

空想は広がります。